イラン 西部 ザクロス山脈周辺 バフティヤリー族のナン用ソフレ 羊毛+木綿
イラン西部のザクロス山脈を越えて過酷な移動生活をすることで有名なバフティヤリー族のナンを包むための食卓布(ソフレ)です。ナン用ソフレの特徴として長さ120センチ程度の正方形で上下のフリンジ部分が織り込まれ、房が無いものが多く、フィールドにはラクダの毛や染めていない黒毛羊毛などが使われます。
このソフレはたいへんに珍しく、フィールド部分に生成りも木綿のヨコ糸が使われています。汚れやすい木綿をどうして使うのかとても不思議なのですが、何度も洗うことで生成りが晒されて真っ白くなっています。上下の綴れ織り部分にもアクセントとして生成り木綿が使われているので全体的に明るく華やかな印象を受けます。
綴れ織りですが、ヨコ糸のはつり部分を両側から絡めるダブルインターロック技法が使われています。ダブルインターロックは織りにくいので普通の敷物にはあまり使われませんが、4000メートルを超える山脈を越えて移動するバフティヤリー族のキリム(敷物)などにも使われています。ナンソフレは小麦をこねる時にも使われることがあるため、スリット(はつり)のあるキリムでは水分や粉が漏れて使いにくいかもしれません。また上下のフリンジの留めが裏表につけられているのですがこれもナンソフレが時として両面で交互に使われることに関係していると思われます。
遊牧民の過酷な生活を伺いしれる、生活の道具としてのキリムです。 40〜60年くらい前のものと思われますが食事の田時だけしか使われないためか状態は良いです。